上田篤氏による講演:「洛西ニュータウン誕生から未来へ」

 平成21年10月31日、洛西支所大会議室において、第2回まちづくり勉強会が開催されました。


 洛西ニュータウンのマスタープランとデザインポリシーを計画された上田篤氏(京都精華大学名誉教授)による講演「洛西ニュータウン誕生から未来へ」の要点は、以下のとおりです。

1)洛西ニュータウンの誕生(洛西ニュータウンを迷路のまちに)

 メキシコの町タスコは、迷路のような楽しいまちである。迷路の空間でも毎日生活している人には、勝手知った世界である。私は、洛西ニュータウンを幾何学的都市ではなく住民本意の迷路の町にする、そのほうが住民にとって親しみやすく安心だと考えた。

マスタープランの第一として、洛西ニュータウンを川を中心としてそこから周辺へだんだんと拡げていくこととした。小畑川の真ん中に広場があり色々のイベントが行われる。そんなところは日本にも数少ないだろう。ただ、小畑川に注ぐ水路をどう活性化するか、洛西の高校生に考えてほしい。

また、イギリスでの近隣住区論の失敗例もあり、商業センターについて、都市性を高めるため、分散型ではなく、タウンセンターにした。タウンセンターや公園で清掃活動をされているたくさんのボランティアの方に感心した。洛西ニュータウンで一番すばらしいことは「人々のまちを愛する心」ではないかと思った。一方確かにサブセンターはさびしかった。知恵をしぼり、活気を持たせる方法を皆さんに考えていただきたい。

都市計画で重要なものは道路網である。丘陵地帯のため起伏が相当あったが、地形に沿った緩やかな勾配の道路の町とした。災害時をふくめ地域の近隣センターと位置づけた4小学校とタウンセンターをむすんで、子どもが安全に通える、道路と立体交差の歩いて楽しむ回遊式の緑道を設けた。公園は、立ち止まる場所として、緑道の一部と考えた。公園では子供を介した出会いから自然にコミュニティーが生まれる。住宅地の細街路は、通過交通をなくし、出入り口を限定することで、犯罪も少なくなると考えた。


2)洛西ニュータウンの未来

ケヤキをはじめとする緑のトンネルの並木道はヨーロッパの都市に負けないすばらしいものだとうれしく思った。ただ、ニュータウンを通過する車のスピードが速いことは、今後の課題である。回遊緑道は、楽しく道草できるように、小学生の発案により、ベンチの設置、記念植樹などを行ったらどうか。

住宅地では、植木や生垣にみなさんが工夫と丹精をこらしておられるが、迷路的になっているまちにおいて、住民の皆さんは人には知られない暗号を各所においておられるのである。景観樹の指定をするなど、もっとランドマークをつくっていってはどうか。

 洛西は竹の産地であり、今も多くの竹林が残っている。洛西ニュータウンの永久の無事を祈り、人々の結束を図るため、「かぐや姫」をテーマとする祭を行うことを提案したい。

京都は都心だけでなく、伏見もあれば、山科も洛西もあり、それらが一体となったものが京都である。ニュータウンのためだけではなく京都の一体性を保つという面からも、地下鉄はぜひ完成させてほしいと考えている。

 

講演全文と写真は、下のPDFから!

tanjo0727.pdf
PDFファイル 4.4 MB